Human-Headed Winged Bull and Lion
作者不詳, 紀元前865〜860年頃
大英博物館 Room 12a

この二体は、必ずセットで見てください。片方だけでは意味が半分になります。
紀元前9世紀、アッシリア王アッシュールナツィルパル2世の王宮、その私室と宴会場の入口を守っていた守護霊像です。人間の頭、鳥の翼、そして——片方は雄牛の身体、もう片方はライオンの身体。
なぜ組み合わせが違うのか。 雄牛は大地に根ざした力、耐える強さ、豊穣を意味します。ライオンは攻める力、王の獰猛さ、敵を裂く牙です。守ることと、襲うこと。 門の左右に性質の異なる守護者を配し、あらゆる方向からの脅威に備える——それがこの組み合わせの意図です。片方だけでは「守り」しか成立しません。
頭部を見てください。 どちらも人間の顔で、髭は幾何学的に編み込まれ、冠には角がついています。メソポタミアでは角の数が神格の高さを表しました。人間の理性と、神の権威と、獣の膂力。この存在は、王宮に入ろうとする者が持ち得ないものだけで構成されている。
次に、脚を数えてください。 ここでも脚は5本です。正面に立てば二本脚で静止し、横から見れば四本脚で歩き出す。門に近づく人と、通り過ぎる人で、見える姿が違います。動く人間を前提に彫られた立体です。
表面の楔形文字も探してみてください。 胴体や脚の間に、王の名と業績を記した銘文が刻まれています。彫刻でありながら文書でもある。「これは誰の宮殿か」を、像そのものが宣言しています。
そして、この像が置かれていた場所を想像してください。 王の私室と宴会場の入口です。つまり、これを日常的に見上げていたのは招かれた廷臣や使節でした。豪華な宴に向かう途中、人は必ずこの超自然的な門番の下をくぐる。もてなしと威圧が同じ動線に組み込まれている設計です。
同種のペアはニューヨークのメトロポリタン美術館にも収蔵されており、アッシリア王宮では護衛像は必ず対で設置するのが原則だったことが分かっています。ここで二体並んで見られるのは、その原則を体感できる貴重な機会です。