赤信号無視の自転車に新たな選択肢 ロンドンで「罰金50ポンド」か“衝突事故の実話映像”視聴
2026年1月4日
ロンドンでは赤信号を無視した自転車利用者に対し、50ポンドの反則金の代わりに、実際の重大事故をもとにした安全啓発フィルムを視聴する選択肢が提供される。事故当事者の証言とCCTV映像を用い、危険運転の現実を伝える狙いだ。
ロンドンで赤信号を無視して走行した自転車利用者に対し、従来の50ポンドの反則金に代わる新たな選択肢が導入される。
それが、実際の重大衝突事故をもとに制作された安全啓発フィルムの視聴だ。
実話をもとにした衝突事故フィルム
このフィルムは、セント・ポール大聖堂近くの交差点で発生した実際の事故を題材にしている。
自転車利用者の**ギャビー・ストンクーテ(Gabby Stonkute)**さんは、赤信号を無視して交差点に進入し、走行中のバスと正面衝突した。
事故の結果、彼女は
- 1週間の人工昏睡
- 肺の虚脱
- 顔面10か所の骨折(顎・鼻・顎先・両眼窩を含む)
という重傷を負った。
「美容院の予約に遅れそうで急いでいました。勇敢だったわけではなく、ただ無謀だっただけです」と、ストンクーテさんは後に語っている。
フィルムでは、事故当時のCCTV映像とともに、彼女自身が体験を語る。
「誹謗中傷を受けるかもしれないと言われましたが、それでも誰かの役に立つなら構いません」
なお、バスが制限速度20mphではなく15mphで走行していたことが、命を救った可能性が高いとも述べている。
なぜ今、この施策なのか
警察当局は、ストンクーテさんの体験を通じて、無謀な自転車運転の危険性を強く訴えたい考えだ。
市の警察委員会による報告書では、次のように指摘されている。
「安全対策の成功により、シティで自転車が赤信号を無視することは、以前よりも“身体的には”危険が小さいと誤解されやすくなっている」
City of London Policeのブレット・ダニエルズ巡査は、
「今回のキャンペーンは命を救い、重傷を防ぐものになる」と語り、ストンクーテさんの協力に感謝を示した。
罰則強化には限界も
現行制度では、50ポンドを超える罰則を科すには裁判が必要となるため、警察の裁量には限界があるという。
また、国会の超党派議員連盟(自転車・歩行者担当)の議長であるファビアン・ハミルトン議員は次のように述べている。
「自転車利用が増えること自体は非常に良いことだ。渋滞の緩和や公衆衛生の改善につながる。しかし、ハイウェイ・コードを守ることは絶対条件だ」
同時に、過去10〜15年で交通警察官の数が大幅に削減されている現実にも触れた。
医療現場が見る“リスクの現実”
医療現場では、無謀な自転車運転の影響がすでに顕在化している。
ロイヤル・ロンドン病院では、2025年初頭だけで
- 通常の自転車による四肢の負傷:202件
- eバイクによる負傷:125件
が確認されている。
同院の整形外科医ジャイソン・パテル氏は、
「eバイクは車体が重く、事故時のダメージが大きくなりやすい」と指摘し、
「予防策は可能だが、最終的には社会全体の対応が必要だ」と語る。
罰より“理解”を促す試み
今回の施策は、単なる取り締まりではなく、事故の現実を“知る”ことで行動を変えてもらう狙いがある。
赤信号無視は一瞬の判断だが、その結果は一生を左右する――
ロンドンはその事実を、映像と当事者の声で突きつけようとしている。