英国旗カラーの舞踏会は是か非か──大英博物館、2026年イベント案を巡り内部対立
2025年12月26日
大英博物館が2026年に計画する「赤・白・青」をテーマにした舞踏会を巡り、館内で反発の声が上がっている。国旗掲揚運動と極右との結びつきが指摘される中、職員の一部は「不適切」と批判。一方で、国の文化機関として象徴を回避すべきではないとの擁護論も出ている。
大英博物館で、2026年に予定されている**「赤・白・青」をテーマにした舞踏会**を巡り、館内で意見の対立が生じている。背景にあるのは、近年イギリス各地で広がる国旗掲揚の動きと、それに一部極右団体が関与しているとの指摘だ。
発端となったのは、館長のニコラス・カリナン氏が提案した舞踏会のテーマ案で、ユニオンジャックとフランス国旗(トリコロール)を意識した配色とされている。これは、2026年に予定されているバイユーのタペストリーのノルマンディーからの貸与を記念する趣旨だった。
しかし、学芸部門や事務部門の一部職員からは、「現在の社会状況を考えると趣味が悪い」「極右的な国旗キャンペーンと結びついて受け取られかねない」と懸念する声が上がっているという。
実際、今年の夏以降、橋や街灯、住宅の窓などにユニオンジャックやイギリス4地域の旗を掲げる動きが各地で見られ、「英国らしさの祝福」と捉える向きがある一方で、その背後関係を問題視する声もある。旗掲揚を推進する団体の一つ「オペレーション・レイズ・ザ・カラーズ」は、反イスラム・反移民を掲げる極右政党「ブリテン・ファースト」からの寄付を受けていたことが明らかになっている。
大英博物館は2025年10月、初の大規模資金調達舞踏会を開催し、「ピンク」をテーマにしたこのイベントは約8,000人を集め、チケットは1枚2,000ポンド。総額250万ポンド超の資金を確保する成功を収めた。出席者にはナオミ・キャンベル、アレクサ・チャン、ミウッチャ・プラダ、マノロ・ブラニク、スティーブ・マックイーン卿、グレイソン・ペリー卿ら著名人が名を連ねた。
一方で、この舞踏会自体も論争の対象となってきた。初回の共同議長を務めたイシャ・アンバニ氏は、アジア屈指の富豪ムケシュ・アンバニ氏の娘であり、同家が率いるリライアンス・インダストリーズは石油化学事業で知られる。環境・文化保護団体「カルチャー・アンステインド」は、この点を問題視し、大英博物館とアンバニ家の関係を批判している。
こうした中でも、国旗テーマの舞踏会を支持する意見もある。『ユニオンジャック:英国旗の歴史』の著者ニック・グルーム教授は、「大英博物館が計画を撤回すれば、国の象徴を極右に明け渡すことになりかねない」と指摘する。
教授はまた、「国旗は単純な政治スローガンではなく、矛盾や複雑さを含む歴史そのものだ。それを理解し、議論し、時に批判しつつ守る責任が私たちにはある」と述べ、知性と愛国心を切り離すべきではないと強調した。
大英博物館の広報担当者は、「初回の舞踏会は博物館史における画期的な出来事で、国際的な連携を支える重要な資金を確保できた。2026年秋に予定する次回舞踏会については、詳細が決まり次第発表する」とコメントしている。
赤・白・青の舞踏会は、単なる配色の問題を超え、国の象徴を誰がどう使うのかという、より大きな問いを博物館に突きつけている。