ロンドンのLime電動自転車、技術的改善が急務に
2025年10月14日
FTの調査記事は、ロンドンで爆発的に拡大するドックレス型電動自転車サービスが街の混乱を招きつつあり、Limeの技術的・運用上の改善が不可欠だと指摘する。路上に散乱する自転車の整理や赤信号無視の抑制など、単なる台数競争では解決できない課題が表面化している。
ロンドンのシュー・レーン周辺では、ゴールドマン・サックスの社員も顔を出すような通勤ラッシュ時に、明るい緑色の電動自転車が群がっている光景が見られる。ハティム・ガンドゥールはゴールドマンで働いてはいないが、このエリアでLimeに雇われた“ストリート・パトローラー”として、朝に散乱したLimeの電動自転車を回収・整列させる重要な仕事を担っている。
「15分前に整えたばかりなのに、もう散らばっている」とガンドゥールは語る。LimeとForestの自転車があふれる路地の様子は深刻で、特に先月のチューブ(地下鉄)ストライキの際には利用者が殺到し「耐えられないほどひどかった」という。
ガンドゥールはLimeで働き始めて4か月で、今年ロンドンで採用された100人の“駐輪パトロール”の一員だ。Limeや競合のForestらの急速な拡大は、ドックレス電動自転車が自動車や公共交通、歩行者と共存できるかどうかを試す世界最大級の実験の一つとなっている。
ロンドンは自転車専用レーンや低交通地区(LTN)への投資、都市の平坦さなどから自転車利用が促進されている。短距離の導線を補完する“ラストワンマイル”としてレンタル電動自転車を使う人もいれば、地区内の移動に使う人も多い。Limeの英国・アイルランド政策部ディレクター、ハル・スティーブンソンは「多くの都市は線状だが、ロンドンは多様な移動パターンがある」と述べる。
この魅力はForest(英国)、Voi(スウェーデン)、Bolt(エストニア)など各社を引き寄せ、Transport for London(TfL)もサンタンデールが後援するドック式自転車と電動自転車の車両を運用している。Limeはロンドンで最大の事業者になっており、同市には推定で25,000〜30,000台の車両があるとみられる(Forestは約20,000台)。Lime自身は正確な台数は公表していない。
ロンドンはLimeにとって、280都市での事業の中でも最大かつ最も成長の速い拠点の一つだ。昨年のLimeの英国における売上高(マンチェスターなど他5都市を含む)は7,500万ポンド増加の1億1,100万ポンドで、同社の総ネット収益6億8,600万ドルの約5分の1に相当する。Limeは来年の新規株式公開(IPO)に向け、時価総額5億ドル程度が想定されている。
しかし競合は、Limeが拡大を優先して効率を軽視していると非難する。Forestの創業者兼CEOアグスティン・ギリサスティは「彼らは上場に向けて数字を良く見せるためにできるだけ速く規模を拡大している。我々は台数を絞り、1台あたりの利用回数を増やすことを好む」と述べる。一方でLimeは、台数が多ければ利用者が近くで自転車を見つけやすくなり、利用が促進されると主張している。
ロンドンの32の区は、それぞれ1〜2社を認可し収入分配や運用基準を求める傾向がある。これはロンドン市長が市全体で電動自転車のライセンス発行権を得る可能性が高まっていることが背景にあり、規模の大きい事業者が有利になる構図だ。
Limeは自社設計の電動自転車を持ち、リスボンやロッテルダムで組み立てられ、ソフトウェアは米国で開発されている。英国事業は昨年、親会社に対して**5,000万ポンドの“再販手数料(reseller fee)”**を支払ったと報じられている。LimeのCEO、ウェイン・ティングは「Limeはグローバルなリーチと規模を持つ唯一のプレーヤーだ。利用者により良いサービスを提供するための資源がある」と語った。
だが規模には責任が伴う。都市部への日常的な自転車流入のなかには赤信号無視をする電動自転車利用者も多く、London Centricの報道によればLime関連の負傷事例も相次いでいる。路上に散乱する自転車を巡る自治体との緊張を受け、Limeは今年**2,000万ポンドの“アクションプラン”**を発表した。これには駐輪場の整備費用、1日4,000台の回収・移動、利用者の行動改善を促す施策への投資が含まれる。
Limeはアプリ内に組み込まれたAIスキャン機能を使って適切な駐輪を促すなどの進展を示しているが、赤信号無視の抑止や路上で転倒した自転車の放置といった問題を限定するには、さらなる技術的対策が求められる。競合他社や自治体は、グローバルな規模が導入される都市に対して具体的な利益をもたらしていることをLimeが証明することを期待している。
ガンドゥールのように、ゴールドマン・サックス周辺でLimeの成長の尻拭いをする人々は既に働いている。しかしロンドン全域に数千台、数万台の電動自転車が広がる中、より大きな解決策が必要であることは明白だ。