ユーロスター復活求める声高まる ― ケント州の国際鉄道サービス再開に圧力
2025年9月27日
新型コロナ以降停止しているユーロスターのケント州停車を巡り、地元4自治体が再開を求める覚書に署名した。アシュフォード、エブスフリート両駅は依然として稼働可能な状態で、数万人規模の署名や仏側の支持も集まっている。政府や他社の参入も含め、地域経済・環境面での利益が期待される中、2026年の再検討を前に圧力が強まっている。
ユーロスターの国際列車がケント州のアシュフォード・インターナショナル駅およびエブスフリート・インターナショナル駅に停車しなくなってから、すでに5年が経過した。2020年、新型コロナ禍で乗客数が急減したことがきっかけで両駅での運行は停止したままだが、地域からの再開を求める声が一段と高まっている。
2025年9月26日、ケント州議会、メドウェイ市議会、アシュフォード区議会、ダートフォード区議会の4自治体の首長がアシュフォード駅に集まり、国際鉄道サービスの復活を目指す覚書に署名した。彼らはユーロスターに限らず、バージンやトレニタリア、ジェミニとウーバーの提携チームなど、他の鉄道会社の参入も後押しする方針だ。これを実現するには、現在ユーロスター専用となっているロンドン・レイトンのテンプル・ミルズ国際車両基地の使用許可が必要で、英鉄道・道路局(ORR)は10月に判断を下す予定である。
ケント州議会リーダーのリンデン・ケムカラン氏は「地域住民も企業も待ち続けてきた。インフラは整っており需要も現実に存在する。数千人規模の雇用、貿易拡大、数億ポンド規模の経済効果が期待できる」と強調した。アシュフォード区議会のノエル・オヴェンデン氏も「25年以上にわたる投資でアシュフォード駅は国際拠点として機能し続けている。復活はケントだけでなく南東部全体、ひいては英国経済の利益になる」と述べた。
ダートフォード区議会のジェレミー・カイト氏は「国際鉄道旅行の需要は増加しており、商業的な大きなチャンスだ」と語り、エブスフリート駅が欧州鉄道ネットワークにおいて重要な役割を果たせると訴えた。メドウェイ市議会のヴィンス・メイプル氏も「再開は経済を支えるだけでなく、気候変動に配慮した移動手段を提供することにもなる」と指摘した。
また、この取り組みはフランスの政治家やビジネス界からも支持を受けており、7万5千筆以上の署名が集まるなど、広範な後押しがある。鉄道大臣のピーター・ヘンディ卿も署名式に出席し「パンデミック以降、国際鉄道への需要は記録的水準まで回復しており、持続可能な欧州との接続は将来さらに拡大する」と述べ、政府としても復活を後押しする姿勢を示した。
一方、ユーロスター社は「2025年いっぱいはケントの駅は閉鎖される」と明言し、2026年に改めて状況を見直すと表明している。「地域の苛立ちは理解しているが、状況を注視しており変化があれば速やかに発表する」とコメントした。
アシュフォードとエブスフリート両駅は今も利用可能な状態に維持されており、地域社会からの期待は高まっている。自治体や住民、仏側の支援者たちは「欧州への玄関口」を取り戻すため、今後も圧力を強めていく構えだ。