ロンドン・アイリッシュセンター、設立70周年を祝う ― 移民支援と文化の拠点
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    ロンドン・アイリッシュセンター、設立70周年を祝う ― 移民支援と文化の拠点

    2025年9月27日

    ロンドン・アイリッシュセンター(Camden)は設立70周年を迎え、アイルランド移民とその子孫のための文化的・社会的な拠点としての役割を今も果たしている。戦後移民の受け入れから始まり、音楽や言語教育、健康支援、コミュニティ活動まで幅広い取り組みを展開。差別や孤独に直面する移民に寄り添い続けてきた歴史が、多くの人々にとって「ロンドンの中の故郷」としての存在感を支えている。

    ロンドンはアイルランド国外で最も多くのアイルランド出身者を抱える都市であり、その中心的な存在がCamdenのロンドン・アイリッシュセンター(London Irish Centre, LIC)である。1955年にアイリッシュ・プリースツ・コミッティのメンバーによって設立された同センターは、当時十分な準備をせずに戦後ロンドンへ渡ってくる移民たちを支援するために創設された。最初に購入されたCamden Squareの建物は£3,887.10で、その後隣接する物件を£2,700で取得し拡大してきた。

    歴史の中では数々の著名人がセンターを訪れており、1968年にはビング・クロスビーが慈善コンサートについて協議するために来館。1984年にはシェイン・マガウアン率いるザ・ポーグスがここで映像を撮影した。現在ではエド・シーランや放送人デーモット・オリアリーが支援者として活動している。

    活動内容は文化面から社会支援まで幅広い。アイルランド語の授業、ダンス、音楽イベントのほか、健康・福祉に関する相談、散歩イベント、サポートグループ、デジタルスキル講習などが展開されている。今年はロンドン共和国アイルランド・サッカーサポーターズクラブが40周年を祝う場ともなった。

    86歳の最古参ボランティア、メイヴ・ヒースはコミュニティカフェで長年活動し、困窮する移民たちを温かく迎えてきた。彼女自身も1960年代初頭にダブリンから渡英した際に「No Blacks, No Dogs, No Irish」と掲示された部屋探しの差別に直面した経験を語り、移民に寄り添う姿勢を貫いている。最近も空腹で困っていた若い移民を助け、その後彼が仕事を見つけて落ち着いたと感謝の連絡を受けたという。

    センターは文化的な拠点であると同時に、アイルランド移民の社会的安全網としての役割を果たしてきた。2023年にはシネイド・オコナーの追悼式を行い、またシェイン・マガウアンの死を悼む集まりも開かれた。CEOのセーアマス・マッコーマックは「若者が直面する住宅や仕事の課題に対応するだけでなく、スポーツや音楽を祝う場、そして故人を偲ぶ場としても重要だ」と語る。彼は「ここは『第二の家』のような場所であり、誰一人拒まない」と強調している。

    2018年にアイルランドのケリーからロンドンへ渡ったタラ・ヴィスカルディも、このセンターを通じて音楽活動の幅を広げ、2024年には自身のアルバムをここで発表した。また、2025年3月にはダウニング街10番地で開かれた初のセント・パトリックス・レセプションに招かれて演奏するなど、コミュニティと深い結びつきを築いている。

    設立から70年を迎えた現在も、ロンドン・アイリッシュセンターは移民とその子孫にとって欠かせない存在であり続けている。今後は改修計画を進め、次の70年に向けてさらなる発展を目指す予定だ。アイルランド文化センター(ハマースミス)と並び、ロンドンにおけるアイルランド系移民コミュニティの大切な基盤となっている。