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医療格差
ロンドンで深刻化する減量薬の不平等
2025年9月17日
体重減少を助ける注射薬がNHSで処方される一方、ロンドンでは地域ごとに利用格差が広がり、患者が不平等を訴えている。
ロンドンで体重減少薬へのアクセスに深刻な不平等が生じていると、専門医らが警告している。薬は週1回の注射で満腹感を持続させ、食欲を抑える仕組みだが、住む場所によって利用できるかどうかが大きく左右されているという。
NHSの減量支援スペシャリスト、ドロッティア・ノートン氏はロンドン議会の委員会で「ある患者は治療を受けられるのに、別の患者は受けられないという不公平が明らかだ」と述べた。彼女は「地域による格差が患者にとって郵便番号くじのようになっている」とも指摘している。
問題の薬「チルゼパチド(商品名:マウンジャロ)」は、重度の肥満患者に対して6月から処方が始まっており、今後3年間で約22万人が対象となる予定だ。NHSは肥満率の上昇を抑え、医療サービスの負担を軽減する手段として期待している。
しかし供給と需要のバランスが崩れ、多くの患者が高額な自費購入やインターネットを通じた非正規品に頼らざるを得ない状況だ。中には研究用に販売されている成分を入手し、自己注射しているケースも報告されている。偽薬が流通していることも確認され、薬剤師からは「患者が偽造薬の写真を見せてきた」との声もあがった。
ノートン氏は「患者が理解していること、求めていること、実際に利用できることの間に大きなギャップがあり、臨床現場が難しい状況になっている」と述べ、一貫したサービス提供の必要性を訴えている。