物語の芯と見どころの紹介です。幕ごとのあらすじと結末は、 読みたい人だけが開ける形で下にまとめています。
冥界の王ハデスが、地上から一人の娘を連れ去った。彼女を取り戻しに行く恋人オルフェウスには、剣も力もない。持っているのは歌だけです。
ギリシャ神話でいちばん有名な失敗譚を、ニューオーリンズの場末の酒場のような舞台で語り直す作品です。冥界は地下の工場になっていて、労働者が壁を築き続けている。ハデスは経営者として現れる。神話が不況の話として読み直されているわけです。
そして誰もが結末を知っています。オルフェウスは振り返ってしまう。語り手のヘルメスも最初にそう告げます——これは悲しい歌だ、それでも我々は繰り返し歌う、と。
分かっていて観るのに、それでも最後の数分で息が詰まる。知っている結末に向かって歩いていく物語を、なぜ人は何度も観るのか——その問い自体が、この作品の主題になっています。
世界を作り直せるほどの歌を書ける青年。ただし目の前の相手が空腹であることには、なかなか気づかない。
飢えと寒さを知っている現実的な女性。愛だけでは冬を越せないと分かっている。
地下の工場を経営する低音の男。妻を繋ぎ止めるために壁を築き続け、その壁が自分たちを隔てていく。
半年を地上で、半年を地下で過ごす女神。夫の変質を誰よりも近くで見ており、酒でそれを紛らわせている。
この物語を客席に語る神。結末を最初から知っており、それでも語りはじめる。
人物の耳元で疑いを吹き込む三人組。迷いはすべて彼女たちの声として現れる。
作者のアナイス・ミッチェルは2006年、ヴァーモントで手作りの「フォーク・オペラ」として上演し、2010年にはボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンやアニ・ディフランコを迎えたコンセプトアルバムを発表しました。舞台化は2013年から演出家レイチェル・チャフキンと組んで進められ、ロンドンのオリヴィエ劇場を経てブロードウェイへ。2019年のトニー賞で最優秀ミュージカルを受賞しています。
オーケストラピットに隠れず、奏者が舞台上に配置されています。トロンボーンやアコーディオンが場面の中で鳴り、演奏者が芝居の一部として反応する。ジャズとフォークを土台にした音楽なので、ミュージカルというより上質なライブに近い聴こえ方をします。
語り手のヘルメスが冒頭で「これは悲しい歌だ」と宣言します。観客は結末を知ったうえで、そこへ向かう2時間を過ごすことになる。サスペンスを捨てる代わりに、「分かっていても人は同じことをする」という主題が全編に効いてきます。ネタバレを気にしなくていい珍しい作品です。
冥界から地上へ向かう長い道行きは、回り舞台とランプの動きで表現されます。振り返ってはいけないという条件のもとで進む行進が、客席から見ても耐えがたい長さに設計されている。この作品でいちばん有名な場面で、音楽と装置が同時に頂点に達します。
ハデスタウン を観る日を決めるための情報です。2026年8月時点。演出の改訂で上演時間が変わることがあるため、当日の予定は 公式サイトの案内も確認したうえで組んでください。
劇場が案内する推奨年齢です。入場制限とは限りません。
台詞での説明が少なく、筋は歌と場面展開で進みます。歌詞そのものは聞き取りにくいことがあるため、あらすじと曲順を先に読んでおくと追いやすくなります。ギリシャ神話のオルフェウスとエウリディケが原典で、筋の骨格は広く知られています。語り手が要所で状況を説明する構成のため、歌詞を追い切れなくても現在地を見失いにくくなっています。
Ticketmaster の販売情報より。9月10日(木)時点。休演日や追加公演が変わることがあるため、購入前に公式サイトでご確認ください。
ほか 326 公演。
座席の選び方や最寄り駅はLyric Theatreの劇場ガイドにまとめています。