GHBがロンドンの一般クラブに広がる、警視庁は4月に2,000リットル超を押収
これまで一部のシーンの薬物とされてきたGHBが、ロンドンの一般的なナイトライフに広がっています。酒より安く、カロリーがなく、二日酔いがないという売り文句で。ただしこの薬物は、効く量と死ぬ量がほとんど隣接しています。

なぜGHBがロンドンのメインストリームのナイトライフに流れ込んでいるのか
2026年8月の報道から
Why GHB is spilling into London's mainstream nightlife が報じたのは、薬物の分布図が書き換わりつつあるという話です。
GHB(ガンマヒドロキシ酪酸)は、これまで主にゲイクラブやケムセックスの文脈で語られてきました。それがいま、性的指向やシーンを問わない一般的なクラブや音楽イベントに流れ込んでいる。
記事が挙げる理由が、身も蓋もなく現代的です。
- 酒より安い
- 作用時間が短く、翌日に残らないとされている
- 糖質もカロリーもない
- 多幸感の強さが、アルコールとMDMAの中間あたりに位置する
- ケタミンが「膀胱を壊す薬」という評判を確立してしまい、その空席に入り込んだ
つまり 健康志向の文脈で選ばれている。そこがこの話のいちばん奇妙なところです。
危険性は用量にあります。リヴァプール大学のフィオナ・メザム教授は、効く量と過剰摂取になる量が近すぎるため、事故的な過剰摂取が起きやすいと指摘しています。2022年4月13日、GHBとGBLは英国でクラスCからクラスBに格上げされました。2026年4月にはロンドン警視庁が2,000リットル超のGBL(GHBの前駆物質)を押収しており、同庁史上でも最大級の押収とされています。
「健康にいい酔い方」を探した結果、いちばん危ない薬に着地した
ここからは私見です
「若者の逸脱」と片付けると構造を読み違えます。注目すべきは、GHBが禁欲的な動機から選ばれている点です。カロリーがない。二日酔いがない。翌朝ジムに行ける。快楽の追求というよりコスパの発想です。効率のいい酔い方を探した終着点が、たまたま致死域の近い薬物だった。
背景には物価があります。パブのビールは1パイント6〜7ポンド、クラブなら一晩数十ポンド。酔うことが高級品になった国に劇的に安い代替物が現れれば、市場は素直に反応します。
英国では若年層の飲酒率が下がり続けていますが、それを健全化の証拠と読むのは早すぎたかもしれません。酒をやめた人が素面になったとは限らず、より安くより測定の難しいものに乗り換えただけ、という可能性がある。
規制もずれています。2022年の格上げは薬物を使った性犯罪への対応で、いま広がっているのは加害の道具ではなく嗜好品です。
では次に何が決まるのか。いまのところ何も予定がありません。格上げから4年、この使われ方への見直しは公表されていない。厄介なのは材料が積み上がらないことです。GHBは死後に日常的に検査されず、24時間ほどで体内から消えます。つまり何人死んでいるのかが、そもそも分からない。無色でほぼ無臭というこの性質のせいで、「知らない相手の飲み物を受け取らない」という原則は、いまのロンドンで実用度が上がっています。
英国のいまを、もう一本。
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