ロンドン議会が仮免許での配達を禁止するよう政府に要求、賛成17・反対2
ロンドン議会が、仮免許での商業運転の禁止を政府に求めました。1日で取れる講習証明を2年ごとに更新し続ければ、本免許を取らないまま一生配達を続けられるからです。ただ、この10年でロンドンのバイク乗車中の死亡リスクは3分の1に下がっています。

L字プレートの配達員を禁止せよ、という声
2026年8月25日 BBC News
BBCが2026年8月25日に報じた Calls to ban London delivery drivers with L plates によれば、ロンドン議会が7月2日、仮免許での商業運転を禁止するよう政府に求める動議を可決しました。賛成17、反対2。提出したのは保守党のトーマス・タレル議員です。
背景にあるのはCBT(強制基礎訓練)という制度です。原付や125ccまでのバイクは、1日の講習を受けて証明書をもらえば、L字プレートを付けたまま公道を走れます。有効期間は2年。ここが肝心で、期限が切れたらまた1日講習を受け直せばよく、本免許の試験を受ける義務は永久に生じません。証明書を取ったその日から、フードデリバリーの仕事に就けます。
タレル議員はCBTを「無期限の使用のために作られたものではない」「道路の脅威」と評しました。カーン市長も2022年に、現行のCBTは「とくに仕事で運転する人にとって適切な資格水準ではない」と述べています。ただし配達員に本免許を義務づける権限はロンドンにはなく、国の管轄だとも付け加えました。
死亡リスクは3分の1に下がった。それでも街の体感は悪化している
数字から見る
まず制度の使われ方から。DVSAによれば、2023年3月から2025年3月の2年間で本免許に進まずCBTを更新した人は約7万7000人。発行された証明書の23%。4人に1人近くが「永遠の初心者」で、抜け穴というより正規の使い道です。
誰もあまり触れたがらない数字があります。TfLの統計では、ロンドンでバイクに乗る人が死亡するリスクは2010〜14年の基準期間から67%減りました。100万回の走行あたり0.40人から0.13人です。この期間は、フードデリバリーが街を覆い尽くした期間と重なります。「L字プレートの配達員が道路を危険にしている」という主張と、この数字は噛み合いません。
では動議は的外れか。そう単純でもありません。リスクが下がったのは「1回の走行あたり」だけです。走行の総数が増えれば街の体感は悪化します。実際、負傷者数で見るとバイクは交通量の約4%しか占めないのに、負傷者の21%を占めている。2010〜14年から唯一減らなかったのがバイクで、42%減った自動車乗員とは対照的です。
つまり1人あたりは確実に安全になり、街全体としては危険が増えた。両方が同時に本当なのが、この問題の意地の悪いところです。
1日で始められることは、プラットフォームにとって不具合ではなく仕様である
ここからは私見です
動議が触れていない点があります。CBTの反復更新で得をしているのは誰か。本免許の取得には時間と金がかかり、配達員に必須になれば参入の敷居が上がって供給は細り、単価は上がる。いつでも辞められて明日また補充できる労働力こそが、プラットフォーム事業の前提です。
タレル議員自身、最大の障壁は大手の「反発」だろうと述べています。示唆的なのは、そのJust Eatが本免許義務化を「積極的に支持する」と表明したこと。DeliverooとUber Eatsは取材にコメントしていません。業界最大手が規制強化に賛成するとき、たいていそれは自社が既に払えて競合が払えないコストです。
TfLの推計では、2022〜24年の平均で死亡・重傷者の約45%——年間1700人ほど——が、仕事で運転・走行していた人の関わる衝突です。うち約1450人は運転者本人ではなく巻き込まれた側です。問題の中心にいるのは無謀な若者ではなく「働いている人」です。
次に決めるのは国です。DVSAの諮問は1月7日に始まり5月11日に締め切られ、更新回数の上限や学科の追加も案に入りますが、9月末時点で結果は未公表です。ただ、時間あたりの配達件数で報酬が決まる仕組みのまま資格だけ厳しくして、歩道に乗り上げるバイクは減るのでしょうか。急ぐ理由を作っているのは、免許の種類ではないはずです。
英国のいまを、もう一本。
← 論考をすべて見る